
IT・ICT・IoTの違いとは?それぞれの定義を解説
近年、企業のDX推進において「IT」「ICT」「IoT」という言葉を耳にする機会が増えています。しかし、それぞれの違いを正確に理解しないまま導入を進めると、適切な技術選定ができず、システムの最適化に失敗する可能性もあるでしょう。
IT・ICT・IoTは、それぞれ異なる役割を持ちます。本記事では、それぞれの定義や違い、IoT導入のポイントについて詳しく解説します。
IT・ICT・IoTとは?それぞれの定義と違い
IT・ICT・IoTは、いずれも情報技術に関連していますが、それぞれの意味や活用範囲には違いがあります。
ITは情報技術全般を指し、ICTは通信技術を含むより広範な概念、そしてIoTはモノがインターネットとつながる技術を指します。
まずは、それぞれの定義について詳しく見ていきましょう。
IT(Information Technology)とは?
IT(情報技術)は、コンピュータやネットワークを活用した情報処理技術全般を指します。具体的には、以下のような技術やシステムがITに含まれます。
- ハードウェア(PC、サーバー、ストレージなど)
企業や個人が使用するコンピュータやサーバー、データ保存のためのストレージなど、物理的な機器を指す - ソフトウェア(OS、アプリケーション、データベースなど)
WindowsやLinuxなどのOS、業務用ソフトウェア、データベース管理システム(DBMS)などが含まれる - ネットワーク技術(LAN、WAN、VPNなど)
社内ネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、安全な通信を実現するVPN(仮想プライベートネットワーク)などの技術が該当 - データ処理・管理技術
クラウドコンピューティングやビッグデータ解析など、データの収集・処理・活用に関する技術もITの一部
ITは、企業の業務効率化や生産性向上のために活用され、現在ではほぼすべての業界で不可欠な存在となっています。
ICT(Informationand CommunicationTechnology)とは?
ICTは、ITの概念に通信技術を加えたものです。つまり、情報の生成、処理、管理だけでなく、その情報を迅速かつ効率的に伝達するための通信技術も含まれます。
具体的には、電話、インターネット、無線通信、光ファイバー通信など、情報を相手に届けるためのあらゆる技術がICTに該当します。ICTの進化により、リモートワークやオンライン会議、デジタルマーケティングといった新たなビジネスモデルが生まれています。
IoT(Internet of Things)とは?
IoTは「モノのインターネット」とも呼ばれ、センサーやデバイスがネットワークを通じて互いにデータをやり取りする技術です。家庭用家電から産業用機器に至るまで、あらゆるモノがインターネットに接続され、リアルタイムで情報を取得・分析し、効率的な運用や予知保全、さらには新たなサービスの提供が可能となります。
IoTの活用により、企業はデータ駆動型の意思決定を行い、業務の最適化や新たなビジネスチャンスを創出することが期待されています。
IoT開発については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
『IoT開発の始め方|基礎知識から具体的な手順、開発事例まで徹底解説』
『IoT開発におすすめのプログラミング言語7選!特徴・用途を徹底比較』
IT・ICT・IoTそれぞれの領域とは

IT・ICT・IoTは、それぞれ異なる役割を持ちながらも、相互に密接に関わっています。それぞれの領域を整理すると、以下のように分類できます。
- IT(情報技術):データの管理・処理
データベース、クラウドコンピューティング、AI分析など、データを保存・処理し、価値を生み出す仕組み - ICT(情報通信技術):データの伝達
ネットワーク(Wi-Fi、5G、光回線など)、クラウド通信、Webサービスなど、データを効率的にやり取りする技術 - IoT(モノのインターネット):データの生成
センサーやデバイスが現場でデータを取得し、それをICTを介してITシステムに送る仕組み
IoTデバイス単体では機能せず、収集したデータを通信基盤(ICT)でクラウドやサーバー(IT)に送信することで初めて価値が生まれます。
例えば、スマートホームのIoT機器の場合は、次のような流れでデータが活用されます。
- IoT(データ生成)
スマートセンサーが温度や湿度、照明の状態を検知 - ICT(データ伝達)
Wi-Fiや5Gを通じてクラウドにデータを送信 - IT(データ管理・処理)
クラウド上でデータを分析し、最適なエアコン制御や自動照明調整を実施
このように、IoTはITとICTが揃って初めて機能し、快適な環境を実現できるのです。
IoT導入においてITとICTが重要な理由
IoTを効果的に導入するためには、ITとICTの役割を正しく理解し、全体設計を行うことが不可欠です。以下の点を押さえないと、IoT導入は失敗しやすくなります。
- ITは「データ活用の仕組み」
収集したデータをどう活用するかを決める
クラウドやデータベース、AIなどを活用し、価値ある情報に変換
- ICTは「通信基盤」
IoTデバイスとクラウドをどう接続するかを決める
Wi-Fi、5G、LPWA(省電力通信)など、適切な通信環境を整備
- IoT導入時には全体設計が必要
どんなデータを取得し、どこで処理し、どう活用するのかを決める
単にIoTデバイスを増やすだけではなく、通信環境とデータ管理基盤の設計が必要
例えば、工場のIoT化を進める際には、現場のセンサーから取得するデータ(IoT)をリアルタイムでクラウド(IT)に送るための安定したネットワーク(ICT)が必要になります。そのため、IoT導入の際には、ITとICTの設計を怠らないことが成功の鍵となるでしょう。
IoT導入前に考えるべき技術選定

IoTの導入を成功させるためには、デバイスが収集したデータをどのように送信するかを検討することが重要です。
- ICTの視点:通信規格の選定
- ITの視点:データ処理基盤の選定
- IoTの視点:デバイス管理の設計
それぞれの視点から、技術の選定方法について見ていきましょう。
ICTの視点:通信規格の選定
通信規格の選定は、IoTシステムの安定性や効率性に大きな影響を与えます。代表的な通信規格にはWi-Fi、5G、LPWA(LoRaやSigfoxなど)があり、それぞれ適した用途があります。
Wi-Fiは手軽に導入でき、高速通信が可能なため、家庭やオフィス向けのIoT機器に適しています。ただし、通信距離が短いため、広範囲のネットワークには向きません。5Gは超高速・低遅延で、自動運転や遠隔医療などリアルタイム性が求められる分野に最適ですが、通信コストが高く、対応エリアが限定的です。
LPWAは低消費電力で長距離通信が可能なため、スマートシティや農業など広範囲にセンサーを設置する用途に向いています。LoRaは安定した通信が可能でインフラ監視に適し、Sigfoxはさらに省電力で物流トラッキングや遠隔監視に活用されています。
IoT導入時は、通信速度、消費電力、通信範囲、コストを考慮し、用途に合った通信規格を選ぶことが重要です。適切な通信環境を整えることで、IoTデバイスのデータを効率的に活用できます。
ITの視点:データ処理基盤の選定
IoT導入では、収集したデータをどこで処理するかが重要です。主に、オンプレミス環境とクラウド環境のどちらを選ぶかで、運用方法やコスト、拡張性が変わります。
オンプレミス環境は、自社でサーバーを管理し、高いセキュリティを確保できるため、金融機関や医療機関に適しています。ただし、導入コストや運用負担が大きく、拡張には時間がかかるでしょう。
クラウド環境は、AWS IoTやAzure IoT Hubなどのサービスを利用し、データの収集・分析を効率化できます。スケーラビリティに優れ、AIや機械学習を活用した高度な分析も可能ですが、通信環境やデータ保護対策が必要です。
IoTのデータ処理基盤は、セキュリティ、コスト、拡張性を考慮し、自社に最適な環境を選択することが大切です。
IoTの視点:デバイス管理の設計
IoTシステムを安定的に運用するには、デバイスごとの識別や管理が不可欠です。ID管理を行い、MACアドレスや証明書を活用することで、不正なデバイスの接続を防ぎ、セキュリティを強化できます。
また、デバイスの稼働状況をリアルタイムで監視し、異常を検知する仕組みを整えることで、トラブルを最小限に抑えられます。さらに、OTA(Over-The-Air)を活用したリモート更新を導入すれば、セキュリティ対策や機能改善を効率的に実施できます。
適切なデバイス管理設計により、安全かつ長期的に安定したIoT運用が可能になるでしょう。
IT・ICT・IoTの導入ならシルク・ラボラトリへ

企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するには、IT・ICT・IoTを適切に組み合わせたシステム構築が不可欠です。しかし、どの技術をどのように導入すればよいか、具体的な選定や設計に悩む企業も少なくありません。シルク・ラボラトリでは、企業の課題に応じた最適なソリューションを提供し、IoT導入を成功へると導きます。
- 企業の課題に合わせた最適なソリューションを提案
- IoTだけでなく、IT・ICTを活用したシステム構築にも対応
- 導入後の運用・保守も含めたトータルサポート
それぞれのポイントを詳しく紹介します。
企業の課題に合わせた最適なソリューションを提案
シルク・ラボラトリでは、企業が抱えるさまざまな課題に対応し、最適な技術選定と導入支援を行っています。IoT導入に関しては、センサーやデバイスの選定、ネットワーク環境の整備、データ管理基盤の構築まで、一貫したサポートを提供します。また、ICTインフラの最適化にも対応し、5GやWi-Fi、LPWAといった通信環境の整備やセキュリティ対策の強化を行い、企業のシステム運用を安定させることが可能です。
さらに、AWS IoT、Azure IoT Hub、Google Cloud IoTを活用したクラウド型ITシステムの導入支援も行い、データの収集・処理・分析を効率化する環境を整備します。
IoTだけでなく、IT・ICTを活用したシステム構築にも対応
IoTシステムを導入する際には、ITとICTの適切な設計が欠かせません。シルク・ラボラトリでは、業界ごとの特性を考慮し、企業に最適なIT・ICT・IoTソリューションを提供しています。IoTの導入を成功させるためには、単にデバイスを設置するだけでなく、それを支えるIT基盤と通信環境を適切に選定し、設計することが重要です。IoT単体の導入支援にとどまらず、データ処理基盤の整備やネットワーク環境の最適化といった包括的なシステム構築にも対応し、企業の業務効率化やDX推進を強力にサポートします。
導入後の運用・保守も含めたトータルサポート
IoTやIT・ICTシステムは、導入するだけでは十分な効果を発揮できません。運用開始後も、デバイスの管理やセキュリティ対応、システムの最適化が必要となります。シルク・ラボラトリでは、導入後の運用・保守サービスも提供し、長期的に安定したシステム運用を支援します。IT・ICT・IoTの導入から運用・保守までをワンストップでサポートし、企業の持続的な成長を支える環境を整えます。
まとめ
IoTの導入には、IT・ICT・IoTそれぞれの役割を理解し、適切な技術を選定することが欠かせません。通信規格の選定では、Wi-Fiや5G、LPWAなど、用途に応じた選択が求められます。また、データ処理基盤については、オンプレミスとクラウドのどちらが適しているかを慎重に検討し、システムの安定性や拡張性を考慮することが重要です。さらに、デバイスのID管理やファームウェアの更新体制を整えることで、長期的な運用の安全性と効率性を確保できます。
IoTの導入を検討されている方は、ぜひシルク・ラボラトリにご相談ください。最適なソリューションをご提案し、貴社のビジネス成長をサポートいたします。